今日未明、スペインから帰ってきました。

 2週間かけてバスで移動したルートがこちら。。。

唯一の移動手段であるバスが思わぬ煙を上げて、高速道路上で立ち往生することもあった


 決して快適とは言えないバス移動を計3700km超も続けていました笑。

 東京・大阪間が約500km、日本の国土の全長が約3000kmなので、いかに半端でない距離を動き続けていたかが推測できるかと思います。東京から直線距離で3700km移動すると、ベトナムのハノイあたりまで行けるようです。まあ伊能忠敬が約40000km歩き続けて日本地図を作ったのに比べると大したことないですね笑。

 とはいえ、日によっては24時間ものあいだ移動を続けていたこともあり、なかなかハードでした。

 

 毎年の恒例行事となりつつあるスペインツアーで僕が楽しみにしていたのは、異文化との接触です。

紫がいわゆるスペイン語、オレンジはカタルーニャ語、
濃青はガリシア語、緑はバスク語。(wikiより転載)

 スペインはなにもスペイン語だけが使われている国ではありません。上の地図をご覧になればわかりますが、ガリシア語やカタルーニャ語、そしてバスク語などさまざまな言語文化が集まった地域として知られています。上の地図に載ってない言語もまだまだあり、今回の一見ランダムなバス移動は、少なくとも4つ以上の異なる公用語が使われている地方を跨ぐ結果となり、かえってスペインの言語事情を垣間見させてくれたのでした。
 中でもバスク語は他のいかなる言語からも孤立している言語として有名です。同じく異彩を放っているジョージア(グルジア)語と同語族なのではないか、という説さえあるほどで、こちらもきわだって孤立している日本語の話者である自分自身を鑑みると、なんとも奇妙な立ち位置にいるものだなあと感心してしまったのでした。

 ツアー中は『火の鳥』と『くるみ割り人形』の上演を繰り返し、くるみの時はコンクリートのような固い床でひたすら中国の踊りを踊り続けていました。こうなってくると、もう本番は気合いで乗り切るしかありません笑。やっとこさトビリシに帰ってこられたので、調子を元に戻して年末の『ドンキ』に臨みたいと思っています。
12月末の公演『ドン・キホーテ』の広告

 移動時間の多いツアーだったので、映画鑑賞や読書も捗りました。ここでいくつか心に残ったものをご紹介します。


  • 『The man who knew infinity』(映画)
    『The man who knew infinity』(wikiより転載)

 ・・・奇才として知られた20世紀のインド人数学者ラマヌジャンの半生を描いた作品です。友人に勧められ、飛行機で観ました。イギリスでの異文化の生活に呑まれながら人知れず葛藤するラマヌジャンを見ていると、高校までの学業に追われる日々がフラッシュバックしたり、(僭越ながら)自分自身の海外生活そのものを目の当たりにする気がしました。もっとも自分は遥かに恵まれた生活をさせてもらってますが、海外生活の苦労――これは年を追うほどにむしろ蓄積していくものなのかな、とさえ思いました。

  • 三島由紀夫『ラディゲの死』(新潮文庫)

 ・・・久しぶりに日本語の小説を読みました。後半に収録されている『ラディゲの死』と『施餓鬼船』が特に印象的でした。ツアーの前半は常に友人たちに囲まれながらわいわいしていて、何か物事を考える必要には追われなかったのですが、中2日の休日を迎えた途端、自分の中の本音やら不満やらに耳を傾けざるをえなくなり、静けさほど恐ろしい喧噪はないな、と気味悪がっていた矢先に読んだ作品集です笑。はっきり言って、精神に堪えましたw。


  • Allan Wats "The book; on the taboo against knowing who you are"

 ・・・東洋思想に凝っているオランダ人の友人に勧められて、いま読んでいます。アラン・ワッツは東洋思想を西洋に紹介した人物として著名ですが、むしろ日本人のみんなにこそ読んでもらいたい本です。それも日本語訳ではなく、英語で読んでもらいたいところです。まだ読み終わってはいませんが、「本当の自分と向き合う」ために書き連ねられた言葉の数々がグサリグサリと心に突き刺さり、だいぶツラいです笑。

 そのほかに、スピノザの『エチカ』などに手を出していますが、こちらは読み終えられる自信があまりありません笑(なぜかスペイン語で読んでいる)。

 それともう1つ宣伝を。『マージナリア特別号』の通販サイトができました。特設ウェブサイトにもリンクを貼りましたが、こちらからも紹介しておきます。まだお手元にないという方は、ぜひこの機会に1冊買っていただけると嬉しいです。
 あとは『マージナリア第7号』の編集作業を年末までに片づけて、心機一転、2017年を迎えようと思います。



 みなさんご無沙汰しています。今年のトビリシはずいぶん冷え込んでいますが、日本はいかがでしょうか。トビリシは比較的温暖な地域として知られているものの、ここ数日は氷点下になることも少なくありません。

 バレエ団はここまで、『ジゼル』や『白鳥の湖』、『ゴルダ』など先シーズン同様のレパートリーに加え、子供向けのバレエなどを上演しています。夜の10時過ぎまでリハーサルの終わらない日もあり、なかなかタフなスケジュールが続いています。

 いまトビリシは夜中の0時過ぎなのですが、数時間後にはスペインツアーに旅立ちます。毎年恒例の行事で、2週間ほど北スペインを中心に『くるみ割り人形』などを上演する予定です。

***

さて、休日などを利用して長らく編集作業に携わってきたマージナリアですが、今年限りでしばらく身を引くことにしました。

 理由は今シーズン最初のブログでほのめかした通りです。

今シーズンは「自分に投資する1年」になりそうです。傍から見るとややアウトプットの少ない1年になってしまうかもしれませんが、将来的に今よりもより発信力の強いアウトプットを生み出せるような環境づくりを徐々に始めよう、と思っています。事実、もうすでに始めています。まだ公に発表できるものは少ないですが、まずはダンサーとしてのキャリアをしっかりと見据えたうえで、マージナリアのような活動も活性化できればと思います。
 遅かれ早かれマージナリアから身を引くことは昨年の時点でほぼ決めていました。日本に住む寄稿者や運営委員同士の連絡を仲介する難しさもさながら、読者や寄稿者のみなさんの声を直接聞くことができないこと、トビリシの自宅に印刷機がないこと(笑)、日本の大学や大学院に通う友人たちとは(長らく異なる生活環境にいたこともあって)雑誌の方向性やお互いの価値観を共有しにくくなってきたこと、そういった現状を踏まえての決断です。

 とはいえ、この秋~冬には2つの異なる雑誌がマージナリアから出版されたことを誇りに思います。1つは10月に完成した『マージナリア特別号』。少数先鋭で「わたしのいる歴史」というテーマに取り組み、全ページオールカラーで印刷されています。まだ現物が手元にないのですが、できるだけ多くのみなさんに読んでいただければ嬉しいです。こちらの特設ウェブサイトも覗いてみてください。
 もう1つは今月末に出版する『マージナリア第7号』です。「遊び」をテーマにしており、どの企画もかなりぶっとんでいます(笑)。編集作業はほぼ99%終わっていて、現在は校正の最終段階。出来上がりが今から楽しみです。


 そんなこんなでマージナリアやら公演やらこなしていたのですが、数時間前から風邪の兆候が・・・wマージナリアを続けるのはちょっときついな~と最近より強く思うようになった、もう1つの原因がこれです。去年あたりまでは時間にも余裕があったのですが、ここ最近はそうもいかず、残り10年ほどのダンサー生活でもっとも大切なこの時期を、自分とは別の世界に属する印刷物製作の連絡業務や編集作業に費やしていては後悔するな、と。運営委員の友人たちとともに7年ほど続けてきた活動とはいえ、5年以上もの間を文字通り「別世界」で過ごしてしまうと、そう思わざるをえなくなっても仕方ないのかなと感じています笑。


 ツアー中は変則的な生活を強いられるので体のコンディションには気を付けたいと思っています。精神的にリフレッシュできるチャンスでもあるので、しばらくはIndesignから離れて、スペイン生活を楽しむつもりです。

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