お久しぶりです。

 マージナリアからも遥かに離れ、怒涛のように過ぎ去った日本公演からも時間が経ち、気づいてみれば今シーズンも残り1ヶ月強になりました。

 ジョージア語の勉強を再開したり、解剖学のみならず生理学の記事を読んだりと、知的興味はそこかしこを彷徨っています。

 バレエ以外のあらゆるアウトプットから身を引いてみると、一瞬のささいな感情や記憶が生活のなかにつぎつぎと吞みこまれていくのがわかります。小説のネタにでもなりそうな突発的な出来事に際しても口をつぐんでいると、めくるページのない絵巻物をただただ横へ横へとたぐり続けているような慷慨に襲われます。

 そして言葉――特に日本語もまた、記述論についての拙文以来、深く濁った湖底に沈んでしまった枯れ葉のように、届きそうで届かない存在へと姿を変えていくのがわかります。


 さて、ジョージア国立バレエ団では、6月に初演する改訂版『ローレンシア』全幕のリハーサルが続けられています。『ローレンシア』は、ジョージアの誇る20世紀の踊り手ヴァフタング・チャブキアーニ(1910-92)の代表作として知られています。以前マージナリアなどでもご紹介した『ゴルダ』もまた彼の手に成る作品です。多くの教師陣がチャブキアーニ本人と踊り、指導されてきただけあって、ダンサーには細かなディティールを伴った指摘が矢継ぎ早に飛んできています。

▲『ローレンシア』の広告


 今月の初めにはエストニア・フィンランドへのツアーを行うなど、精力的な海外公演を敢行してきたバレエ団の2016/2017シーズンも、7月初旬のガラ公演をもって幕を閉じます。バレエ団のプリンシパル・ダンサーなどは来日公演でたしかな感触を掴んだとみえ、日本のバレエ団へのゲスト出演が決まるなどしているようです。

 自分自身としては、昨年9月に見定めたように、「自分に投資する」シーズンになったように思います。必ずしも結果の伴うシーズンではありませんでしたが、来たるべき春を見据えて雪解けを待つ新芽の気分といったところでしょうか。積もり積もった雪の重みはこれまで以上に堪えるものでしたが、以前は気づきすらしなかった些細な椿事にも心づくようになったと思います。向こう1年は見龍在田となるのか、それとも『豊饒の海』の大団円のような、ぽっかりとした空虚感が自分を待ち構えているのか、僕にはわかりませんが、いずれにしてもきっと「それも心々ですさかい」なのでしょう。


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