ご無沙汰しています。東京はそろそろ桜の咲く時期ですね。

 Facebookでかまびすしく宣伝した通り、先週はジョージア国立バレエ団の日本公演に参加していました。

来日公演はおろか、バレエダンサーになれるとさえ思っていなかった高校生の頃、西日暮里から上野まで足繁く通っていたのを思い出します。東京文化会館と言えば、憧れの場所であり、落ち込む場所でした笑。末席ながらこの舞台に立てたことはダンサー冥利に尽きます。

 なんてことを書きましたが、プロのダンサーになった今でもやはり、東京文化会館は「落ち込む場所」でした笑。



 なにも公演の出来が悪かったとかではありません。むしろ僕が入団して以来、このバレエ団がここまで素晴らしい舞台を作り上げたのはほぼ初めてだったのではないかとさえ思います。それほどにみんなの思い入れも強い公演だったので、多くのダンサーにとっては忘れられない至福の経験になっただろうと思っています。

 そういった公演だったからこそ今回は、自分が何を踊ってきたか、入団以来自分が何を成し遂げられたか、ということを振り返る絶好のチャンスでもありました。東京滞在中は、わざわざ足を運んでくださったみなさんからの温かい声援を受けながら、「自分は本当にやりたいことに向かって進んでいるのか」ということを真摯に考える日々で、必ずしも手放しで日本を娯しむ、という気分にはなれませんでした^^;

 日本に帰ってくると痛感することですが、ダンサーを囲う就労環境は日本よりもジョージアのほうが断然整備されているものの、生活環境や教育水準といった至極当たり前のことでは日本の良さが目につきます。とりわけモノの有無よりも、ヒトとのコミュニケーションについてはそう思わざるを得ません(停電や断水がしょっちゅう起こることと、組織内のaccountabilityが破綻していることのどちらが大変だと思いますか?)。僕はなにも日本が一番だとは思いませんが、普段声も上げずに耐え忍んできたようなことの「異常さ」を再認識してしまうと、やんぬるかな、元のジョージア生活はいくぶん悲愴的に感じられるものです。

 来日前からそういった落差をなんとなく予期していたので、そういった意味でも今回の公演は複雑な気持ちで迎えた、というのが正直なところです。それでもできる限り「今」を楽しんだつもりですが!



 閑話休題、ともかく来日前には例の記述論の文章も書き終え、東京では念願のマージナリア第7号特別号をようやく手に入れました。帰りの飛行機であらためて第7号を読み返してみましたが、思っていたよりもなかなか面白かったです笑。特に巻頭の対談企画が第7号全体のテーマ「遊び」を多角的に束ねていたのが良かったように思います。ダンスについての発言に関してはいくらか思うこともありましたが、それは後日。

 また、最近は「芸術的artistic」の原点に立ち返ろうと思い、哲学などの専門的な文章から離れ、文学作品を読むようにしています。あとは夕方にリコーダーを吹いてます笑。本当はピアノを弾きたいんですが、ピアノがないので・・・


 そんなこんなでお祭りムードからは距離を置き、自分自身を見直す、そういう時期を迎えています。僕はあらゆるバレエダンサーを世間的な先入観でひとくくりにして語ってしまう、そういう無配慮で雑駁なnarrativeを好みません。だからこそ、言うべきことは自分で言う、そんなブログを続けていきます。


 かくかくしかじかの頑固な主義で、バレエ団がアップしたこの集合写真に僕は映っていません。まあ、魔が差したんだなこいつ、とか、ノリ悪いな~、とか言ってもらっても構いませんが、この写真は僕にとって「3年間で成し遂げられなかったこと」の墓標です。



 ―― 明日からは子供向けバレエの4公演、来週末は『ゴルダ』です。


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