バレエ『火の鳥』

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 グルジア国立バレエ団は今月、ミハイル・フォーキンの『火の鳥』を上演しています。



 2月に国立オペラ・バレエ劇場がリニューアル・オープンして以来、バレエ団の上演プログラムはほぼ全て「初演」です。まず最初にヴァフタング・チャブキアーニの『ゴルダ』をニーナ・アナニアシヴィリによる改訂版という形で十数年ぶりに復刻上演、また、アレクセイ・ラトマンスキーの『レア』をふくむプログラムでは、おそらくはソ連崩壊以後初めてとなる、モスクワ・ボリショイ劇場への客演も果たしました。3月以降も、ファジェーチェフ版『白鳥の湖』、そして今回の『火の鳥』と初演が続いており、なにひとつ新作のなかった先シーズンに比べると、今シーズンは凄まじいほどの初演ラッシュだと言えます。
 『ゴルダ』については今月下旬に発売されるマージナリア最新号で詳しく取り上げたので、ぜひそちらをご覧ください!ラトマンスキーの『レア』もなかなか興味深い作品なので、そのうちこのブログにてご紹介したいと思います。


 1週間ほど前からは一部のソリストらがイタリア・スペインをツアー中。僕はスペイン合流組ということで、ようよう自由な時間を満喫しています。おととい4月9日はDay of National Unityだったこともあり、今週は奇蹟的に週休2日(笑)。ひまにまかせて、『火の鳥』の全曲スコアを眺めたり、サボっていた語学の勉強にいそしんだりしています。

*:ソ連末期の1989年4月9日、グルジア人のデモ隊とソビエト軍とのあいだ大規模な衝突が起こり、死傷者が多数出た。その悲劇を記念した国民の祝日。

▲チャブキアーニ『ゴルダ』のポスター
それにしても、『火の鳥』は恐ろしい作品です。リヒャルト・ワーグナーの総合芸術論を真に受けて各界の前衛芸術家らを集めたディアギレフもさりながら、そのうちのどの領域をとってみても驚くべき工夫に満ちた作品というのは、無論1人の手で作れる代物ではありません。マージナリアを作っていても思いますが、1人のアイデアというのはアイデアの領域を出ないことが多いものです。それがある一つの形をとって奇想天外な作品となるためには、他人との化学反応が必要だったりするんですよね。『火の鳥』の音楽を用いた作品は後代数多く作られましたが、どんなに現代的な手法を導入したとしても、きっと1910年の初演版を超える存在は出てこないのではないか、とさえ思えてきます。
 今回、グルジア国立バレエ団で初演するにあたっては、アンドリス・リエパが指導にあたっており、フォーキン・プロという名目で『ショピニアーナ(レ・シルフィード)』と『薔薇の精』も同時上演されています。フォーキンという稀代の振付家がどのような世界観をもって作品を組み立てていったか、ということを渉猟するのに格好のプログラム編成だと思います。それぞれの作品についていろいろ考えるところもあるんですが、フォーキン論はまたの機会に(笑)。

 もしあなたが楽譜を少しでも読めるダンサーならば、一度『火の鳥』のスコアを覗いてみることをおすすめします。きっと一度ならず「こんなのどうやったら思いつくんだよ?」「どこ演奏してるか全くわからんww」と思うはずです。演奏者とダンサーがお互いの領分を守りつつ、お互いを十分に刺激し合えるような作品、それが『火の鳥』です。




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